アメリカはバイデン政権に代わり、米国内の政権支持基盤の不安定さもあって、明確にトランプとの差別化を打ち出す必要があるため、中国に対する対立姿勢を強めています。
無論これは既定路線で、トランプ政権下でもバイデン氏は一貫して対中強硬論であり、日本の一部のトランプ支持者が言うような「バイデンは親中」などと言った妄想はもとからなかったわけです。
正義のアメリカ、悪の中国みたいな、頭の中がお花畑みたいな発想の人が、うじゃうじゃいるこの国ですが、政治とは、そんな分かりやすい勧善懲悪の世界ではなく、複雑な要因が絡み合った状況で駆け引きをしていく各国のパワーゲームといえます。
もちろん自分もその複雑な構造すべてを理解しているわけではないのですが、現在日本が置かれているポジションが非常に難しい状況にあるということは分かります。
先日の日米首脳会談時にバイデン大統領は「台湾」を踏み絵として用意し共同声明に盛り込みました。これにより緊迫する米中関係に、日本は米国側として加わるという姿勢を改めて取らされたわけです。
アメリカが大好きな人たちにとっては、別段問題のないように感じるかも知れませんが、現実はそうは簡単にはいきません。
上掲の財務省のページに掲示されている資料で確認する限り、現時点で日本の最大貿易国(輸出入総額)は中国です。
当然この国との関係を悪化させることは、もろに日本の経済へ直撃します。通信機器、衣類、電子部品…こういったものが中国から調達できなくなれば、極端な話、日本人は裸で暮らすことになるかも知れません。
ユニクロの柳井社長のこのウイグルに対するコメントが非常に分かりやすい例で、彼のこの発言は国内外で批判されていたので覚えている人も多いと思います。
ウイグルの強制労働に関しては、人権問題としてあってはならないことですが、柳井社長がこの発言をしているのは、彼が人権を軽んじているからではないと思います。
ユニクロのIRを見てみると、すでに国内事業よりも海外事業での売上の方が大きくなっています。そしてその海外事業で展開する1,439店舗のうち799店舗が中国です。
またユニクロは生産も中国に大きく依存していて、146箇所の工場のうち87箇所が中国にあります(日本は3箇所)そして原材料の綿もウイグル産のものを使っているわけです。
このような圧倒的な中国依存とも言える背景から、柳井社長が中国政府を刺激するような発言ができるわけもなく、結果あのような発言をしてしまうわけです(もちろんそれで正当化されるような問題ではありません)
ユニクロの話は一例に過ぎません。今や経済的な面だけみれば、日本はアメリカよりも深く中国と関わっていることを念頭に置くと、最初に話していた急速に対立を強めている米中関係に、アメリカ側として参加するリスクが分かると思います。
これは当然、アメリカじゃなくて中国側へ参加しろという話ではありません。日米同盟を中心とした、今までの日本政府のアメリカ隷従の姿勢だと、安全保障・経済という両側面から、非常に難しい立場に追いやられる可能性が高いと思っています。
この加藤勝信官房長官の発言が端的に表していますが、この難しいシチュエーションで、日米首脳会談では米国にしっぽを振り、中国が強く出たら中国側にしっぽを振るような、日和見的な姿勢は双方からの不信を買うだけでろくなことにならない気がしています。
これからはアジアを中心に米中以外の国々との関係を強化して二大国への依存度を相対的に下げ、米中双方に対して一定の距離をとって日本の独立性を高めた上で、国際関係を再構築していく必要があると自分は思っています。もちろん、これが自分が言うほど簡単なことじゃないこともわかっています。
この難局を乗り越えていくためには、現在の菅政権や、自民党の面々ではあまりに力不足なので、早急に国内の腐敗政治を立て直して、難しい国際情勢を踏まえた上で、日本の再生を目指せる新政権の誕生に期待しています。