オリンピックの人件費に関する毎日の記事が話題になっている。
資料を見ると、アルバイト相当とみられる「サービススタッフ」の人件費単価ですら最高で日額4万2000円と、目安とみられる基準額(2万5000円)を大きく上回る。42会場の全役職の約5割で予定した基準額を上回っており、職員の一人は「優秀な人材を各社で取り合うこともあって、人件費単価が高騰している」と釈明する。
引用:毎日新聞
ちなみに全国の最低賃金(2020年度各県の最低賃金の加重平均)は「902円」1地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)なので、1日8時間労働したとして1時間あたり「7,208円」となる。
目安とされる基準額「25,000円」ですら、かなり一般人の感覚からは乖離していると思うが、「42,000円」とは尋常ではない。これは1日8時間で逆算すると時給は「5,250円」、これが一般的な金額だと言うなら日本は豊かである。
更に責任者クラスの目安とされている日額30万円というのがどれだけ大きいかというと、上述の最低賃金「902円」で、週休2日相当で1ヶ月22日間働くと月額「158,752円」となるので、責任者クラスの1日の人件費で、最低賃金で2ヶ月働いたのと同程度ということになる。
勿論最低賃金で働くのとは、求められる技能や能力が違うのだから金額に差があっても仕方がない……と思われるかもしれないが、一般的に高い専門技能を要求されているとされる医療スタッフですら、オリンピックでは基本無給なのだ。
国内のスポーツ大会では医療従事者への日当は一般的で、関係者によると医師の場合、Jリーグで3万円、高校野球の地方大会で1万円が相場という。
引用:東京新聞
サッカーのプロリーグであるJリーグに呼ばれる専門性の高い医師でさえも、日額3万程度とのことなのでオリンピックのサービススタッフ(アルバイト相当)より低い金額だ。
毎日新聞の記事には、一般的には考えられないような突拍子もない数字が並んでいる。多額の税金が投入されているのだから、納税者にはその数字の真偽を確かめ、使途の詳細を知る権利がある。
だがオリンピック組織委員会は、「毎日新聞の記事の内容は不当である」として抗議声明をホームページに公開した。組織委員会側の言い分としては、毎日新聞の記事にある人件費に関しては参考値であり、実際に契約した金額ではないということを言いたいらしい。
、東京2020組織委員会が常識外れの高額な人件費を支払っているかのような誤解を招く見出し及び内容であり、極めて遺憾です。毎日新聞社に対しては、書面で厳重に抗議を行い、紙面及びウェブサイト上で謝罪及び訂正を求めました。
引用:毎日新聞報道について(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)
資料を元に数字を提示しているのだから、誤解を助長するようなものではない。またそのような資料があるのであればそれに近い金額で実契約が行われたと読者が感じることは誤解とは言えない。
にもかかわらずオリンピック組織委員会は、逆ギレして報道に圧力をかけてきてるわけなのだ。毎日新聞は何も悪いことはなく納税者の公益に利する問題提起をしただけで、逆にこの疑念に対して組織委員会側は実際の契約内容を提示して弁明すべきであろう。
簡単にまとめれば以下のような話である。
毎日新聞:「人件費日額最大30万という資料がある」
組織委員会:「そんな常識外れの高額な人件費は払っていない!」
組織委員会:「できるだけ安く契約できるよう交渉している!!」
立憲民主党 谷田川氏:「では契約内容を公表すべきなのでは?」
組織委員会:「個人情報なので公表は差し控える」
誰も個人名を上げて情報を開示しろなんて言っていない。実際に契約した人件費の内訳を公表しろといっているだけだ。潔白で実際は安く契約できているのならばそれを証明すればいいだけなのだが、それをしないのはなぜだろうか。
このようなオリンピックと金の問題こそが、我らが日本国が誇る「税金が必要なところに一切使われずに消えていく仕組み」の縮図と言える。
「コンパクト五輪」、「復興五輪」、「アスリートファースト」、「人類がコロナに打ち勝った証」……とメディアで欺瞞的な言葉が飛び交い続けたが、実態は単純な「一部の人たちの金儲けの道具」でしかないのである。
- 1