数十年ぶりにスティーブン・スピルバーグの「シンドラーのリスト」を観ました。学生の頃に数回観たのですが、何年経ってもこの作品は色褪せることはなかったです。
若い頃に観たときは、アーモン・ゲートの狂気に恐怖を感じ、ホロコーストという人間の愚かな所業に強い怒りを覚えた記憶があります。
歳をとったせいか、今回はゲートよりも、本作の主人公であるオスカー・シンドラーの心の変節が気になりました。
ナチス党員で、安い労働者としてユダヤ人を利用して大金持ちになったシンドラーは、徐々に自分たちが行っている残虐な行為の狂気に気づき、彼のできる限りの範囲でユダヤの人々を救っていきます。そして戦争が終わったとき、もっと彼らを救えたのではないかと、自分を責めて慟哭するシンドラーの姿が非常に人間的で印象に残りました。
史実に基づいた、ホロコーストという圧倒的に残酷な状況と、ある程度脚色されて描かれるシンドラーを巡るヒューマニズムというコントラストが、若い頃よりもすんなりと自分の中に受け入れられた気がします。(オスカー・シンドラーが多くのユダヤの人々を救ったことは事実で、ある程度史実に基づいて描かれています)
個人的な感想はさておき、このような作品を一概にエンターテイメントと言ってしまうと誤謬がありますが、誰もが今後も気軽に観られる名作としてアーカイブされていることは、人類にとって大きな資産だと思っています。
昨今、「ホロコーストはなかった」、「従軍慰安婦は売春婦だった」などという歴史修正主義的な言説がネット上に溢れており、自分たちを肯定する歴史を欲する卑小な輩で溢れかえっていますが、そういった歴史修正的な風潮に対して、シンドラーのリストのような作品が一定程度は抑止力になってくれるのではないかと思います。
エンターテイメント性を排した、ドキュメンタリー作品の方が歴史を正しく知るという観点では良いと思うのですが、しっかりとした歴史考証が行われた作品であれば、多くの人々に観られ語られるという意味で、シンドラーのリストのような作品がもつ意義は大きいと思います。
シンドラーのリストとはだいぶ趣が違いますが、ホロコーストの時代を背景とした映画で、自分の好きな作品を2つほど紹介しておきますので、興味があればぜひ一度観てみて下さい。
ライフ・イズ・ビューティフル
さよなら子供たち
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