朝日新聞に自民党の二階俊博幹事長の下記のような記事が掲載されていた。
二階氏が全国旅行業協会の会長であることはよく知られており、「GO TO トラベル」が彼の肝入であることもご存知の通りだ。
旅行業界自体が新型コロナウィルスの感染拡大の影響を大きく受けて、苦しんでいる業界であることは誰も疑わないと思う。実際に海外インバウンド需要は一時期ほぼゼロになるくらいまで縮小した。1JTB総合研究所
ただ支援の仕方が「GO TO」ありきなのはなぜだろう。批判が多い中、ずっと政府が推進し続ける「GO TO 〇〇」の支援のあり方には違和感しかない。
「GO TO」は文字通り人移動を伴い、人を集める施策なので、人が集まるのを避ける・人の移動を極力減らすといった、政府が当初から掲げているコロナ対策の基本方針に反する。
またこの施策は旅行代金の一部(割合)を国が負担することを前提とするので、割引額が大きくなりお得感が高い高級な宿泊施設に予約が偏り、中小零細の宿泊金額の低額な事業者層への恩恵は少なくなっている。
このような間接的な支援より、事業に関わる減税措置や事業規模に応じた支援金を出すような直接的な施策の方が遥かに実効性が高いはずだ。またそういった方法であれば人を集めたり、人の移動を増やすこともなく、一部の事業者に恩恵が偏るような不平等なこともない。
「GO TO トラベル」が第三波と呼ばれる20年年末から21年年始にどの程度影響したのかを、定量的に把握することはできていないが、政府が感染防止策の根底に集まらない・移動しないを掲げて、緊急事態宣言や外出自粛を呼びかけた以上、無関係とするには無理があるだろう。そもそも無関係ならば政府に「GO TO」を止める理由もなかったはずだ。
そして今回の二階氏の発言にあるように、彼らは一切学ばない。昨年末にあのような結果を招いたにもかかわらず、都合の悪いことは隠蔽し、話をすり替え、ひたすら自己利益のために同じ主張を繰り返す。
感染拡大傾向の高まっている現在、感染拡大を拡げる可能性の高い施策を推し進めることに、一切の合理性はない。困窮している業界や事業者を助けることが真の目的ならば、感染拡大を助長せず、もっと実効性が高く、かつ平等に恩恵の得られる方法を模索すべきだろう。
世界各国に比べて検査数も検査体制も最低レベルで感染の実態把握ができておらず、感染対策に関しても自粛とワクチン頼りでほぼ無策な自民党側の重鎮の口から「コロナを恐れとったら何もできない」と言われるのは、何とも味わい深い…
自身や派閥の利益のために無邪気に発せられているこの言葉で、国民は「賛成/反対」で分断され、実施されれば感染を拡げてコロナ禍を長引かせ、またこの国に生きる多くの人たちが困窮していく。
二階氏のこの発言に代表される自民党政権の人たちの言葉には、そんな自覚は寸分もないことが本当に恐ろしい。
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